ゼロになって

短歌と日記と趣味について

オススメの歌集

冬野水槽です。
今回はオススメの歌集を紹介します。
また、それぞれの中から私のお気に入りの歌を一首ずつ引用していきます。

 

「短歌って気になるけど何から読めばいいのかわからない」

「知らない歌集を読んでみたい」

「冬野が影響を受けた歌集を知りたい」

みたいな方の参考になれば幸いです。

 

ちなみに案件ではないです。

 

 

  • 山田航編著、『桜前線開架宣言』、左右社、2015

 

万人にオススメできる一冊です。
現代歌人40名の作品がその作者のバックボーンと共に掲載されており、まさに「現代短歌ガイドブック」と呼ぶにふさわしい内容。
価格も2000円強と手ごろで、ボリュームを考えればむしろ安い。マジで。
この本をきっかけに、現代短歌の世界に踏み込んでみてはいかがでしょうか。

 

ぬばたまの夜のプールの水中で靴下を脱ぐ 童貞だった/しんくわ

 

 

  • 伊波真人、丸紅茜、『青春迷宮』、KADOKAWA、2020

 

「とりあえず一冊歌集が欲しい!」

「短歌ってよくわからないけど興味ある!」

って人におすすめの一冊です。
とある両片思いの高校生二人の物語を、短歌と絵で表現した作品です。
一番の特徴は、なんといっても挿絵がついていること!情景をイメージしやすい上、伊波真人先生のまっすぐな短歌の魅力を増幅しています。短歌が挿絵を、挿絵が短歌を引き立て合っている感じ。また短歌の表記にもいろいろと工夫が施されており、読んでいて飽きない作りになっています。大好き。


恋愛小説としても、画集としても楽しめる上、短歌まで読めちゃう!そして値段も1600円強と安い!なんてお得なのでしょう!
初めて歌集を買う人に胸を張ってオススメできる一冊です!

 

つい君をさがしてしまう日直の二文字の下の空白にさえ/伊波真人

 

 

  • 木下龍也、岡野大嗣、『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』、ナナロク社、2018

 

 男子高校生二人の7日間を二人の歌人が短歌で描いた物語です。
大きな特徴は、ジャンルがミステリーであること、「7月1日(木)~7月7日(水)までの7日間」という日にちが明記されていることです。
短歌で描かれるミステリーというのは、なかなか馴染みがなく面白いのではないでしょうか。純粋に歌集としてのクオリティも高く、手に取りやすい一冊だと思います。
また、今年2021年はこの書籍内の曜日と現実の曜日が一致する年なんですよね。どっちも7月1日は木曜日。なかなか珍しいことなので、そういう意味でも一読の価値はあると思います。

 

体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと/岡野大嗣

 

 

  • 岡野大嗣、『たやすみなさい』、書肆侃侃房、2019

 

 発行所は「しょしかんかんぼう」と読みます。
これは今まで紹介したものと違い、挿絵もストーリーもない、いわば一般的な”歌集”というやつです。
この本、まず装丁が綺麗!文字や星にホイル加工が施されており、角度によって様々な表情を見せてくれます。
内容としてはどこか幸せで、でもどこか切ないような日々を描いた歌が収録されています。ちょっとした幸福や悲哀の瞬間をやわらかく切り取ったような感じの歌が多いと感じました。

内容も装丁も素敵なこの本で、本棚を彩ってみてはいかがでしょうか。

 

アカウント名で呼び合う関係のまま海へ来て名前をはなす/岡野大嗣 

 

 

  • 笹井宏之、『えーえんとくちから』、ちくま文庫、2019

 

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい/笹井宏之

この一首から始まるのは、細やかで美しい笹井宏之ワールド。
日常的な視点はもちろん、世界を俯瞰しているような視点から詠まれた歌まで、様々なものの見方をしていく新鮮な一冊です。
抽象的な歌も多く、ことば自体の美しさをそのまま味わえることでしょう。

ちなみに、この本は私が初めて読んだ歌集です。
某先輩から頂いたもので、今でも何度も読み返しています。
短歌自体をほとんど知らなかった私にとって、この本は非常に啓発的でした。短歌の世界の奥深さはもちろん、日本語という言葉そのものの美しさを知れた一冊といっても過言ではないでしょう。

 

からっぽのうつわ みちているうつわ それから、その途中のうつわ/笹井宏之

 

 

今回はここまでです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。