【2021年7月13日】短歌ができるまで
冬野水槽です。
今回は心の整理も兼ねて、私が短歌を一首つくるまでの過程を文字に起こしてみたいと思います。
自己満足ではありますが、要所要所で私が意識していることや改善点などを解説していきたいと思います。いつか短歌で行き詰まったり、成長してからその時と今(2021年7月13日時点)との違いを見返したりしたくなった時のために。
はじまりはじまり。
1.原案
①外出している時
②思い出に浸っている時
③とっさの思いつき
の3パターンが多いです。
今回はパターン①、外出時に思いついた情景から一首を生み出していこうと思います。
その時の情景がこちら。
夜、終バスを待っていた。烏龍茶をがぶ飲みしたら、蜘蛛の巣がオレンジ色の街灯に照らされて綺麗だった。
些細なことですが、空の「雲」ではなく虫の「蜘蛛」を見上げるという点が妙に印象に残りました。これを57577に落とし込んでいくわけですね。
ちなみにこういう情景は、最初から定型に落とし込まず散文で記録することが多いです。アイデアの種だけメモして、それを開花させるのがこの後の作業になります。
2.定型に落とし込む
ではこの情景を57577にしていきましょう。
私の場合、最初から完璧な一首を創るのではなく、まずは粗削りでも定型にして、それからゆっくり推敲していくのがやりやすいです。これは人によると思いますが。
そしてとりあえず形にしたのがこちら。
バス停で烏龍茶飲む街灯を背に輝いた蜘蛛を見上げて
とりあえず短歌にはなりました。
バス停で/烏龍茶飲む/街灯を/背に輝いた/蜘蛛を見上げて
で定型に収まってますね。
次は、この歌の改善点をピックアップしていく作業です。
3.改善点の羅列
ここでは気になる点、添削できる点を羅列していきます。
この歌ではこんな感じ。
・「烏龍茶飲む」での助詞の省略
・「街灯を背に」している主体が私なのか「蜘蛛」なのか分かりづらい
・同じく、「輝い」ている主体が分かりづらい。
・歌の焦点がぼやけている。メインは烏龍茶を飲む「私」なのか?「蜘蛛」なのか?「蜘蛛の巣」?「街灯」?「バス停」?
・情景が分かりづらい。夕方?夜?早朝?
こんなところでしょうか。
それでは改稿に移りたいと思います。
4.第二稿
ここでは先述した気になる点を基に、第二稿を形作っていくフェーズです。
ポイントは、
・主体の確定
・情景描写の強化
とりあえずこの二点を意識して詠んでみようと思います。
バス停を編む蜘蛛の巣と終バスを待つ俺を照らしている夜光
多少良くなったでしょうか。
文字数ですが、
バス停を/編む蜘蛛の巣と/終バスを/待つ俺を照ら/している夜光
と、定型ぴったりです。
さて、ここで気になる点です。
・「バス停」と「終バス」の重複
・街灯という要素が弱い?「夜光」=街灯と繋がりにくい?
・「街灯に蜘蛛の巣が照らされている」という情景が伝わりにくい?
・(個人的に句跨りはそんなに気にしていないのですが、芸術点的にはどうなんでしょう?気になるところです。)
オレンジ色の街灯が大好きなので、なんとか組み込めないか四苦八苦しています。
ちなみに私は一首スラスラと詠んでいくわけではなく、
「夜光」から「照ら/している夜光」、「俺を照ら/している夜光」…みたいな感じでパズルのように5音or7音にあてはめながら少しずつ形作っていく感じです。
実際めちゃめちゃ時間かかってます。
第三稿へ移ります。
5.第三稿
ポイントは
・オレンジ色の街灯(オレンジ/橙色/鼈甲色/蜜柑色)の描写
・「バス」の重複
とりあえず以上二点を意識していきます。
木下龍也先生の教えに則り、「困ったら語順の変更」をしていきます。
橙の夜光が照らす蜘蛛の巣を見上げる俺は終バスを待つ
文字数。
橙の/夜光が照らす/蜘蛛の巣を/見上げる俺は/終バスを待つ
ぴったりです。割と収まりも良いのではないでしょうか。
今の実力ではこんなところでしょうかね。これで完成としたいと思います。
6.短冊にする
気分が乗ってるうちに短冊にしちゃいましょう。
私は一首であればうたの短冊メーカー、
連作であればL版SSメーカーを使うことが多いです。
今回はうたの短冊メーカーを使っていきます。
コンセプトは「夜」「街灯」「橙色」などですので、これを基に作ります。
できあがったものがこちらになります。
以上で完成です。長かった。多分2~3時間はかかりました。
とはいえ、こうやって自分の思考や感覚を言語化しながら作る方が私には向いているような気がします。
もちろんこの一首を気に入らない人がいたり、改善の余地はあるかもしれませんが、現状の私の実力ということで流してください。
それでは、今回はここまでとさせていただきます。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
マジで長かった。